レポート 日本の匠を巡る散走
桜の開花が例年よりも遅いのに、3月では記録的な最高気温を記録したこの日。日本の匠を巡る散走は、ちらほらと咲き始めた桜を探しながらの一日となりました。
いまにも咲こうとする大きく膨らんだ蕾と、健気に咲き始めた花々の可憐さは、満開の桜の絵を見るとついつい忘れてしまいそうですが、これはこれで非常に趣のあるものです。
さて、久々に9時にOVEに集合した散走。予報通りの高めの気温のおかげか、朝はやくても寒くなく暑くもなく、清々しくスタートを切ります。
OVE近辺の桜の名所といえば、青山霊園ですが、こちらの桜は本当に「ちらほら」と際ている状態。それでも、その咲いている桜を探すワクワク感と、見つけたときの満足感を味わいながら、進みます。
青山通りから赤坂御用地の脇を通って四谷方面へ。四谷から市谷・飯田橋方面へ、外濠の内側を進みます。日当たりの良い場所にある桜には五分咲きくらいのものも。そして、ソメイヨシノ以外の桜が結構街には植えられていることにも気づくのでした。
最初の目的地は靖国神社。東京の桜の状態を代表する「標本木」がある場所です。
開花宣言から二日が経過、標本木も三から五分咲きくらいでしょうか。
遊就館の方に進むと、遊就館と靖国会館の間に濃いピンク色の立派な桜(陽光桜)が満開!思わずカメラを向けている人たちが集まっています。
奥の方には日本庭園があるので見に行こう、という提案がありさらに奥に進みます。池と傍らにあるお茶室、そして桜をはじめとする木々の生い茂る庭を堪能します。
日本庭園の手前では、ちょっと参拝者とは違う感じの人達の行列がありました。
並んでいる方に話を聞くと、これからプロレスが行われるとのことでした。靖国神社でプロレス!インパクト大でした。
https://www.z-1.co.jp/event/detail_20240331.html
産後に本殿での参拝を済ませて、次の目的地へ向かいます。
靖国神社を出て、九段の坂を下りたら北上して後楽園方面へ向かいました。
東京ドームシティの脇を通って、白山通りを少し走ったら、菊坂を上って本郷通りへ。
東京大学が見えてきたので赤門から入ろうと思ったら、門が閉まっていたので正門から安田講堂へ向かいます。
この日のランチは東大の中央食堂。
3月前半に改装が行われていたようで、壁が真っ白で室内全体の雰囲気も明るく感じます。以前はちょっと映画に出てくる「監獄」っぽい雰囲気が趣もあり良かったのですが。。。(良いのか悪いのか)
日曜だったので、メニューも営業時間も縮小されていましたが、思い思いのおかずを受け取ります。
ツーリングに行った話や、自転車で長距離を走るときの服装などなど、自転車談義をしながらのランチタイム。
食後は上野の山をぐるりと回ります。上野公園を横目に見ながら上野高校の坂を上ると東京芸大。そして黒門、国立博物館と上野公園の北側を突っ切ります。JRの線路を超えて週宅地を進みます。通りを進むに従って、建物の影から意外と近くにあるスカイツリーがドーンと現れます。
そのまましばらく進むとかっぱ橋道具街にたどり着きます。
向かったお店は「實光刃物」堺の打刃物の専門店です。
實光刃物は明治33(1900)年に大阪府堺市で創業、4代続く包丁専門店。著名人とのコラボレーションをしたりと、伝統的な世界に新しい空気を取り入れようとしてるお店。ホームページもお店のことだけではなく包丁に関する情報が満載。見応えがあるのでオススメです。
實光刃物の下見をしたときにお店の方から伺ったお話のなかで興味深かったのは、合羽橋に進出後すぐに新型コロナウイルスによる完成症のために社会が「自宅待機モード」になった際、釣りや料理に目覚めた男性がお店を訪れるようになり、新しい販路が切り開かれたという話。ソロで走れるのでサイクリストが増えたのと同じようなストーリーに、閉塞感のある時代になってもどこかに出口があるのかな、と感じるようなエピソードでした。
昨今は、海外からの職人さんがお店にやってきて、自分の者だけでなくお仲間の包丁も買っていくのだそうです。確かに、合羽橋界隈には海外からの一般の旅行客に混じって、「職人さん?」と思しき眼光の鋭さで包丁や(他の店では)食器などに目を向けている外国人が大勢歩いているのを目にしたのでした。
店構えからして「和」な空間。中に入るとショーケースの中にキラリと光る包丁が並んでいます。
ショールームは2階。
「和」を演出したショールームでは、ずらりと包丁が並びます。
コの字型のカウンターが店の真ん中にあり、そこにはズラリと並ぶ包丁。カウンターの中にいる店員さんから説明を伺いながら、いろいろな包丁を拝見。重さの違いや特徴など説明してもらいました。
「ああ、こういう包丁があれば便利なのか」とか「まず揃えるならこの一本なのかな」など、説明を伺いながら少し自分の中で目的意識が芽生えてくると、なおも説明が響いてくるのです。
實光刃物を見終わった人は、となりの「キッチンワールドTDI」へ。こちらは一転して「世界のキッチン用品が買える店」というキャッチコピーそのままに、各国の料理用品が揃っています。比較的目につきやすい店前には韓国料理の小物や、中華料理の火鍋用鍋(2つに分かれているやつ)など、おなじみの道具が並んでいるのでした。
かっぱ橋から次の目的地、御徒町に向かいます。
店舗と住宅が混在する東上野、昭和通りの近くにはコリアンタウンがあり焼肉屋や韓国食材店が並んでいます。
昭和通りを渡り、春日通りも渡ると御徒町の宝石街。
宝石関係の店が並んでいるのですが、日曜日は閉まっているお店が結構目立ちます。それでも、大きな水晶やアメジストがショーウインドーに飾られていたり、珊瑚やダイヤモンドや真珠の専門店があるのを目にすることが出来るのです。
さて、今回立ち寄ったのは御徒町―秋葉原駅間の高架下にある「2k540 AKI-OKA ARTISAN」に店を構える「染めこうば にじゆら」
「にじゆら」は「注染」という昔ながらの方法で手ぬぐいを染める、(實光刃物、そしてシマノとも同じ)大阪府堺市の染工場ナカニの手ぬぐいブランド。のりで染まらない部分を作った生地を沢山重ねたあとで、布の上に土手を作って流し込んだ染料を下から吸引すると重なった布すべてに色が染まっていくという、見ていても楽しい(もちろん職人さんは大変です)染め物です。出来上がった手ぬぐいの染まり具合に、味のある「にじみ」や「ゆらぎ」があることからつけられたブランド名が「にじゆら」。
そのかすかにじんでゆらいだ色とりどりの手ぬぐいが並ぶ店内に入ったら、まず動画で「注染」の工程をみながら理解を深めました。
店内に並ぶ手ぬぐいは「季節」「他企業(等)とのコラボ」「定番」など、いろいろなテーマと題材で染め上げられています。梅や桜の手ぬぐいはぽかぽかとした春の日差しが感じられるような温かみがあります。かとおもうと、包丁制作の工程を示したもの、地ビールの会社とのコラボレーションのクールなもの、などなど、「あ、これいいな」と思い始めるとキリがありません。
じつは、大阪にあるOVEの従兄弟のようなお店、シマノスクエアの特注品もあるのですが、今回は品切れでした。
筆者は幼少期に良く乗っていた「阪急電車」の手ぬぐいを購入。独特のマルーンカラーが懐かしさを駆り立てるのです。
御徒町を後にし、次の目的地へと向かいます。本郷の坂を上り、順天堂大のあたりから水道橋に向かって神田川沿いの坂を下ります。まっすぐ走り飯田橋を過ぎると外濠沿いには桜並木が続くのです。日当たりが良いからか、ここの桜は思った以上に花を着けていて、気分もアガるのでした。
市谷の手前で外濠を離れて北側の路地に入っていきます。次に立ち寄ったのは「市谷の杜 本と活字館」
こちらは、印刷業界2強の一角である大日本印刷の市ヶ谷工場にあった時計台(1926年竣工)を復元した、本づくりについての「いろいろ」を学べる施設。「活版印刷」の流れについて学べる1階、しおりづくり(随時)などいろいろな体験が出来たり、企画展やミュージアムショップもある2階。ふだん目にする「印刷物」について、じっくりと考える機会を与えてくれる、楽しい施設です。
1階には、活版印刷から製本にに至る各工程について、体験ができるのですが、体験してみると解説やアプリケーション内での対話相手が若干上から目線で、敗北感を味わいつつもとても勉強になるところが、なんともアタマにくる(←これでも褒めています)のです。
館内の案内が活字のようになっているのも、かわいらしく、それを見るだけでも来る価値がある気がしてしまうのです。
今回立ち寄った時にやっていた企画展は「活字の種を作った人々」。その昔、活字は職人さんが一つ一つ彫刻刀で掘っていた、というそういう時代に活躍した活字職人達の系譜とそれぞれの職人さんの働いていた場所の背景(新聞社や印刷会社なと)の説明は、読んでいて過去に手繰り寄せられるような力を感じさせられたのでした。
AIが発達するとなくなる仕事がある、と一時大騒ぎになりましたが、そうでなくとも仕事というのは生まれて消えていく(一部は骨董品のような形で細々と生き残る)ものなのだと再認識。
さて、なんだかんだと暑かった一日。ちょっとオーバーヒート気味だったので、最後はアイスで冷却。OVEとしては異例のミニストップ立ち寄り。季節のフルーツはいちご、いちごの入ったソフトクリームやサンデーなどでひと息ついてからOVEへと向かったのでした