自転車で行ってみた② ついつい長居してしまう、地元の人で賑わう創業55年の老舗喫茶
空はからりと冬晴れで、空気は澄み切っている。東に向かって走る自分の左頬に風が当たって、北風だとわかる。でも、寒くはない。都心の景色も街路樹が色づき、衣替えをしたように一変している。両国橋を渡ると墨田区。しばらく走ると今日の目的地、錦糸町に着いた。
創業55年、かつてはニット工場だったことから、店名が「ニット」。チャーミングなおばあちゃんと娘さん、孫の親子三代と白髪に蝶ネクタイ姿のベテラン男性スタッフ2人で営んでいる。昼前だというのに、店内はほぼ満席。店頭の看板にあるモーニングセットは12時までとある。店に入った時間は11時半、「モーニングはまだ頼めますか」と聞いたところ、「ええ、いいんですよ。12時まではね」とニッコリと答えてくれる。店内を見渡すと、モーニングを食べているカップル、早めのランチで焼き肉セットを食べている中年男性、ゆっくりとコーヒーを飲んでいるおじいさん、みんな中々席を立たない。入った途端に居心地の良さがわかる。すべてがあたたかい。こんな喫茶店も今ではめずらしい。
店から南へ進むと、新大橋通りに出る。新大橋は江戸時代、大橋と呼ばれた両国橋の下流に後から掛けられた橋として名付けられた。浮世絵にも登場する、由緒正しき橋。ゆったりと水量を湛える隅田川、かつての大川に目をやると、遠くに清洲橋が見える。
ほどなく人形町、銀座三越前と、今日ははからずもお江戸コースになった。皇居周辺のイチョウ並木はどうだろう、と和田倉堀に目をやると、すでにきれいに色づいている。木枯らし1号が吹いたばかりなのに、冬は駆け足でやってきている。