レポート トークイベント「彼女たちの山」平成の時代、女性はどう山を登ったか
『ネパール旅のいま-感性を深める自然・人・暮らしと食-』の最初のイベントとなる7月12日、ジャーナリスト・ライターとして活躍される柏澄子さんによるトークイベントを開催いたしました。
柏さんは、登山に関わることを題材に、山岳文化圏に住む人々をテーマとした執筆が多数あります。
2023年3月14日には『彼女たちの山 平成の時代、女性はどう山を登ったか』(山と渓谷社)を出版されました。
今回は本書で丹念に取材されてきた女性の中から、2名の女性と山とのかかわりを中心にお話を伺いました。
一人目は谷口桂さんについて。
登山家の平出和也さんと共にインド・カメット峰南東壁を初登攀、登山界のアカデミー賞ともいわれるピオレドール賞を女性で初めて受賞された方のお話です。
谷口桂さんは、自転車ともかかわりが深く、幼少時代から旅の手段として自転車に親しみ、大学時代には明治大学のサイクリングツーリング部で国内外を旅して回りした。山との出会いのきっかけは、アルバイトで始めたメッセンジャー(自転車便)内のサークルで。その後はアドベンチャーレースで海外遠征をするなど、43歳で生涯を閉じるまで活動的な生き方を貫きました。
持前の好奇心とコミュニケーション能力の高さで海外クライマーともさかんに交流し、日本の山岳環境の魅力を海外に伝えるという点でも大きな功績を残しました。
二人目は、「山小屋の女性たち」の章より、南アルプス南部の北岳、間ノ岳、仙丈ケ岳の野呂川の支流のほとりに立つ両俣小屋の管理をされている星美智子さんについてお話しいただきました。
両俣小屋は登山客はもとより、渓流釣り客も多く利用するという山小屋です。星さんは1981年から両俣小屋での仕事に従事し、昭和、平成を通じて同じ場所に根を下ろして「生きる覚悟」を決め、長年にわたり自然を見つめながら過ごしてきました。台風による川の氾濫や広大な森の消失といった危機せまる大きな環境の変化から、小さな植生の変化まで、定点的な暮らしからは想像しがたい、大変広い世界観と思想を持つ女性のストーリーを伺いました。
柏澄子さんによって紐解かれた、山に生きる女性たちの信念や価値観に、心を打たれ共感した部分が皆さんそれぞれの胸中にあったことでしょう。山を愛し仕事とした女性たちの強くしなやかな生き方を通して、まだ見ぬ山への憧憬や自然との親しみを深めるひとときとなりました。
日時|7月12日(水) 19:00-20:30 開場|18:30
場所|OVE
参加費|¥1,000(ドリンク・お菓子付き)
定員|15名
スピーカー|柏澄子さん
MC|竹内洋岳さん
本イベントは、7月4日-30日まで開催される『ネパール旅のいま-感性を深める自然・人・暮らしと食-』関連トークイベントです。