レポート 夕涼み散走(その2)
月はまたいでいるものの、実は2週連続だった「夕涼み散走」。この日のメダマは水上バスでの移動なのですが、予想以上に大満足だったクルーズとなったのでした。それはなぜかというと…
前回同様、麻布台ヒルズのプチ探検は盛り込むことにしたのですが、OVEから麻布台ヒルズに向かう道も、同じでは面白くありません。
乗船時刻の都合で、1時間早い集合となったこの日のルートはOVEの前の道をひたすら真っ直ぐ、青山墓苑を通過して青山公園側から住宅地を通ってミッドタウンに向かい、さらに六本木の東側にある「スリバチ」地形のまわりをかすめるというルートを採用。いつもと少し違う道、でも結構印象が変わるものなのでした。
六本木のスリバチをかすめてロアビルの前に出ると、お馴染み六本木の街並みが目に飛び込んでくるのです。六本木一丁目方向にぐるりと回って麻布台ヒルズを目指します。
麻布台ヒルズに到着すると、外交史料館展示室に向かいます。麻布台ヒルズのデザインは、基本的に「角がない」、どこもかしこもふんわりと丸いのが特徴と思われるのですが、なんとなく繭の中とか(←入ったことはありませんが)鍾乳洞の中とかにいるような、虫になったような、両生類になったような、変わった気分にさせられるのです。わたしだけかもしれませんが。そういえば、こういうヌルヌルした感じ、SF映画でよく出てくるな、などとも思います。
さて、外交史料館。江戸時代後期から現在に至るまでの日本と海外との間で交わした重要な条約等の文書が「生」で見られる。学生時代に教科書で学んだ〇〇条約の当事者のサイン付き条約文書を外交史料館に行きさえすれば誰でも簡単に目にすることができるというのは驚きだ。
そのうえ、展示に添えられている説明がわかりやすく、仮に昔に習ったことを忘れてしまっていたとしても十分に理解できるだけでなく、それを立派な冊子にしたものを来室者全員が持ち帰れるという手厚さ。麻布台ヒルズを訪れた時には、是非立ち寄ってもらいたい場所です。奥にある企画展および吉田茂、杉原千畝コーナーも一見の価値あります。
さて、そんなこんなで麻布台ヒルズを後にして(中庭で記念写真撮りました)、東京タワーから芝大門、浜松町とひたすらまっすぐ東進すると竹芝に到着。水上バスの発着所である「ウォーターズ竹芝」に到着。ちょっと時間が押してしまい大急ぎで自転車を折り畳み、折りたたみでない自転車は輪行袋に収納します。
準備が整ったのとほぼ同時に乗船開始。危なかった。船員さんの指示に従いながら船内の各所に自転車を固定したら、あとは船の旅。
ちょうど満潮と重なったこともあり(潮は中潮)、両岸の遊歩道が水面スレスレになるくらい、水量が多い。2階(屋根の上)のデッキに上がっていると船員さんがやってきて
「みなさん、しゃがんで、手すりの高さから手や頭を出さないでください!」と大声で注意を呼びかける。
周りにいるのは、楽しそうに何かがあるとすぐ踊り出す南アジア系の観光客のグループなど、外国からの観光客が多く「説明理解できるのかな?」と人ごとながら心配になった。でも、船員さんの声と、視線の先の橋を見ると、どうやらこれからくぐるこの橋は、かなり低くて、立っていると本当に体ごと削られそうだと気づき、全員が神妙にデッキの手すりよりも低くなるようにしゃがんだのです。
船が橋に差し掛かると、これが本当にギリギリで、手すりのちょっと上をリベットで止められた鉄橋の骨組みが通り過ぎていくのでした。そんな橋をいくつかくぐった…
「今日の船長は上手いんです。今日ぐらいの潮位だとちょっと下手な船長だとちょっとした揺れでぶつけちゃうこともあるんですよ」と本当か嘘か素人には判断できないようなことを真顔で説明する船員さん。スリル満点の川上りなのです。
川から眺める東京の風景は特別。川の真ん中付近を走るので視界が開けていることと、目線が低いこと。いつもの東京とはちょっと違う一面を見られるのは、船の旅の醍醐味なのかもしれません。
自転車も、徒歩や自動車、電車での移動とは違ったスピード感(視野の広さ狭さに関係します)と視線を与えてくれますが、さらに違う目線で、一日に2度楽しめる散走となったのでした。
吾妻橋を通り過ぎ、東武浅草線の橋梁を過ぎると浅草二天門の"バス停"。自転車を下ろしながら、体も船を降ります。チャチャっと折り畳み自転車を組み立てて、輪行袋に入れていた自転車もサッサと組み上げます。
これから日没までの30分、再度のクルージングを楽しむのです。
隅田公園(台東区側)を駆け抜けて桜橋(隅田川にかかるX字の人道橋)を渡って墨田区側へ。スカイツリーに向かってまっすぐ走り出します。
前半に走った港区の街並みが微妙に違う墨田区の街並み、その中に大きく聳えるスカイツリー。
「そういえば、今日は東京タワーの下も通ったし、ダブルツリー散走だね」
という声が聞こえてきました。確かにそうだ!
スカイツリーの真下は、夏祭りの様相。それを横目に、そしてスカイツリーを見上げながら、方向転換して浅草を目指します。後にスカイツリーを背負いながら正面に近づいてくるのは、浅草の隠れた(隠れてない!)ランドマーク、通称「う●○ビル」。
黄金の炎をデザインしたこのオブジェが、夕日に照らされてキラキラと輝いているのです!
この輝きにはスカイツリーも東京タワーも勝てん。
「これを見たら雷門も印象に残りませんよ」
と冗談で言っていたのに、この先で通った雷門の印象が、本当に全くない筆者なのでした。
TX浅草駅に接続する駐輪場に自転車をとめて、ここからは徒歩。合羽橋方面に向かうのに、最初逆方向に歩いてしまいちょっと時間をロス。気を取り直してこの日のお店「盃屋 かづち」に向かいます。
古い呉服屋さんを改装した古民家居酒屋。狭い階段を上がった2階の和室の奥の部屋。他の団体さんもすでに飲み始めている部屋の一角に陣取ります。まずは乾杯から。
シンプルながら素材がよく、ひと工夫が加えられたおつまみが次々と運ばれてきます。「あ、これ、やってみよう!」と思える意外なアイデアメニューもあったり。
同時に様々な話題の花が咲きます。食事がやっと一段落した頃に、ちょうどお店もラストオーダー。
お店の外で記念撮影をしたあと、電車の駅を目指して夜の浅草を散歩したのでした。