OVE

「OVE散走」を率いて11年。Mr.散走にとっての「私の散走」は、自転車の楽しさを伝え、人と人とをつなぐ

「私の散走」最初に登場するのは、OVEで散走を提案するイベント「OVE散走」を立ち上げた時から関わっている、田辺達介さん。2006年にOVEが始まって以来、ほとんどのOVE散走で先頭を走ってきた田辺さんにとっての「散走」とはどのようなものなのか。今回は連載の初回ということで、散走というもののイメージをお伺いすることにした。


自転車の楽しさを伝えたいと思うなかで見つけたもの


自転車は全部好き。サイクリング、MTB、ロードレース、なんでもやるし生まれ変わるなら自転車になりたい、と笑う田辺さん。現在は「OVE散走」の道案内のほか、数々のイベントで自転車のあるライフスタイルを人々に伝えているが、実は昔から自転車の面白さを伝えたいと思い続けていた。

あるとき自転車で走りながら脇道に入ったり、その土地の歴史について記された標識を読んだりしていると、地図の上の絵に過ぎなかった2次元の東京が突然立体化することに気づいた。「運動」「スポーツ」としてではない自転車の面白さを広められないだろうか。



歴史に興味を持ち始め歴史小説を読み出したら、立体化した街に時間という奥行きが加わった。もともと好きな落語のストーリーは街に深みを与える。道端の案内版でさらに興味が広がる。自転車を媒介にして、様々な要素が掛け合わされていく面白さ!
これこそが、みんなに伝えたい自転車の良さなのだ。

「散走」の相談を受けたのは、ちょうどそのような時期だった。


「ニューサイクリング」と「パターソン」に見た理想郷


「散走」のコンセプトを初めて聞いた時、「ポタリングと何が違うんだ?」と感じた。いまでも同じように感じている人は多いかもしれない。そんな中でヒントとなったのは「ニューサイクリング」という雑誌。サイクリングの黎明期から2014年まで発行され、日本のサイクリング界を支えていたと言っても過言ではない。中学生の頃にニューサイクリング誌に出会った田辺さんは「自転車で旅をする大人の雑誌」と感じたという。自転車そのものよりも旅をした場所の空気感や雰囲気を感じさせる記事に共感を覚えた。

ニューサイクリング誌の世界は、自転車がないと成り立たない。でも、必ずしも自転車が主役ではない。行った先の空気や景色、人や街を感じることが大切なのだ。



もうひとつ、田辺さんの「散走」観に欠かせないもの、それが「フランク・パターソンの絵」だ。イラストレーターのパターソンは20世紀の初めから半世紀以上に渡ってイギリスの街並みや田園風景の中を自転車で走る人々をペンで描き続けてきた。ゆったりとした丘陵地帯を走る風景。自転車に乗る今見てもカッコイイ人々。ペン画だからこそ伝わってくる、陽光の暖かさ、風の流れ、雨の冷たさ、夜の闇。絵の中には「より速く、より遠く、より高く」走るスポーツとしての自転車の雰囲気はほとんど感じられない。たとえレースの絵であったとしても、成熟した雰囲気が感じられるのだ。

「カッコイイ」ことや描かれている「気持ち良い」感覚こそが、とても大事なのです。と田辺さん。

そのようなイメージの一つ一つが、散走を形作る要素となる。自転車を介してその要素が自由に掛け合わされたものが、散走なのだ。



田辺さんが11年間率いてきた「OVE散走」は「散走」をイメージしやすくするためのイベントだ。「散走するうえで自転車は人が持っているモノどうしをつなぐための触媒。人が増えればモノも増えるから、散走の幅も広がる。」だから同じ内容であっても、走るメンバーによって全く違う散走が出来上がる。
「そういう化学反応が起きるところも散走の面白いところ。それをお伝えできる企画を心がけています」
まさに田辺さんは散走を通じて人と人、モノと人とを結びつけている。そして、いつもその中心には自転車がある。


見知らぬ街に馳せる夢


将来の夢は、と聞くと「ちょっと恥ずかしいけれども」と前置きをした後で
「日本一周をしてみたい」
という。でも、渋滞の中を我慢して走ったりとか、ひたすらペダルを漕ぎ続けるのではない。そういうことは若い時にやれば良い、もっと経験を活かした旅をしたい。
「行く先々の知らない街で散走するってのも面白いかもしれません」
たぶん、そのような日本一周をするに違いない。


近影

田辺 達介
たなべ・たつすけ
クリエイティブディレクター
株式会社クランク代表
明治大学在学時にサイクリストツーリングクラブおよび体育会自転車競技部を創立。
OVEオープン時より「OVE散走」の企画・運営に関わるほか、たちかわ創造舎における自転車企画のプランニング、バイシクルライド・イン東京など「ライフスタイルとしての自転車」に関連する企画に取り組んでいる。

Photo:Tadashi NAKAMURA

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