OVE

自転車に魅了された建築家 太田民雄さん


建築家・太田民雄さん(62歳)は生まれも育ちも東京都港区南青山。OVEのご近所さんであり、地域の大先輩ということにもなります。太田さんはこの街の変遷をつぶさに見てきました。特に印象に残っているのはバブルの時代。そこかしこに新しいビルや住宅が建ったバブル期は、太田さんが建築家として貴重な経験を積んだ時代でもありました。


「超高層を除く、あらゆる建築物を設計しました。当時は早川正夫先生の事務所に勤めていて、とにかく仕事の量が多かった。眼の毛細血管が切れて血が出るほどでした(笑)。いやー、おもしろかったですね。やりたいことが全部できた時代でした」。


「早川正夫氏は現代木造建築の大家で、青森県の八甲田ホテルや滋賀県の彦根城博物館など、大規模な木造建築を数多く手がけています。事務所の中心的スタッフとしてそれらの設計に携わった太田さん自身も、やがて木造建築のオーソリティとして活躍の場を広げていきます。その先に岡山県立大学の教授という、意外な道も開けていました。


「岡山に大学ができるから先生にならないかという話をいただいて、てっきり非常勤だと思って行ってみたら専任の教授だったという(笑)。学校の先生になりたいとは思っていませんでしたし、いろいろ大変なこともありましたが、収穫もたくさんありました。岡山で非常にレベルの高い仲間たちと出会えましたし、学生を育てることの深みや喜びも身をもって知りました。特に最後の5年間は、こんなにもおもしろいものだったのかと」。
この充実した生活の間、なんと太田さんは東京から岡山に「通って」いたそうです。
「どこかで意地みたいなものがあったのと(笑)、東京には活きた情報があるということが理由です。岡山で借りた家には毎週2泊3日程度で、週末には東京に帰ってきました。おもしろい大学でしたし、おもしろい生活でした。この生活を通して人間の幅が少し大きくなったかなと思っています」




ところがあるとき、思いもよらない事態が太田さんを襲います。心筋梗塞と診断されたのです。
「自覚症状のない心筋梗塞という珍しい症例で、心電図で判明したんです。それで手術をするという話になったわけですが、たまたま岡山は心臓病治療の最先端の地でもあったので、いろいろな人に話を聞いてみたんですね。すると僕の場合、最も重要なのは再発を防止することらしいとわかってきた。そこで手術はせず、生活習慣を徹底的に改善することにしたんです」。
実はこの出来事が、太田さんとOVEを結びつける遠因にもなりました。数か月をかけて生活習慣を改善した太田さんは、無事に大学を退官し、東京での建築の仕事に専念することになりますが、野菜中心の食事を続けるために通っていた店が閉店してしまいます。困ったなと思っていたところで太田さんが見つけたのが、自然素材を用いたメニューの充実したOVEのカフェだったのです。
「ある人に紹介されて来てみたら、すごくヘルシーだし、何より美味しかった。それですっかり気に入ってしまったというわけです」。


そしてOVEで食事を楽しむうち、太田さんは自転車にも興味を抱くようになります。実は太田さんは学生時代、かつて神田にあった名店「アルプス」でツアラー(ランドナー)を組んだことがあるほど、自転車に深く接していました。しかしやがて興味の対象はオートバイ、自動車(ポルシェでスポーツドライビングを楽しむレベル)へと移っていき、自転車のことは頭から消えて久しかったといいます。ところがOVEのスタッフと自転車の話をするうちに、かつての興味が甦り、健康を重視するライフスタイルとも結びつきました。


「そこで医師の先生にも相談して、乗り始めてみました。心拍数を上げすぎないよう注意しながら、毎日20キロ。今は始めて3か月半ですから(2012年2月現在)、累計で約2000キロ走っています」。


今は体調もより向上し、自転車の効果を実感しているといいます。




自転車を始めるにあたり、太田さんは現在の自転車事情を把握するために、本棚の幅にして2メートル分の自転車関連書を購入して読み込んだそうです。と同時にショップを回って話を聞き、「おじさんたちがレーシングジャージで頑張る姿にちょっと違和感を覚えた」ため、まずは大手メーカーのクロスバイクからスタート。そして現在は自分の走るルートに最も適したギアを装備したロードバイクと、同じくマニアックな英国スタイルのクロモリバイクのオーダーを済ませ、出来上がりを待っています。

「僕はのめり込むタイプ。わずか3カ月半で、かなり自転車に傾倒しています(笑)」。
集中して対象を研究する力と、自分に適正なものを自ら選ぶ力。やはり一芸に秀でた人はすごいな、と思わせる話です。きっと太田さんはこの力をさらに発揮して、健康志向型の大人の自転車ライフスタイルを確立されることでしょう。太田さんの毎日がますます充実しますように。

近影

おおた・たみお
1949年、東京都生まれ。東京理科大学理工学部建築学科卒業。早川正夫建築設計事務所勤務時代からさまざまな建築物の設計に携わる。木造建築をはじめとする日本の伝統的建築物に造詣が深く、木造の公共建築も数多く手がけている。古民家の再生や街並み保存も研究テーマの一つ。1993年から17年間、岡山県立大学デザイン学部デザイン工学科の教授を務める。一級建築士事務所「A4プランニング」代表取締役所長、岡山県立大学名誉教授。

Photo:GOTO AKI

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