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偶然の出会いを楽しむ A-CROSS主催 川向 緑さん


日本オラクルで企業のCSR活動に従事しながら、青山で働く人のネットワーク「A-CROSS」の企画・推進を行っている川向緑さん。
企業や年齢を超えたユニークなつながりに着目した、きっかけはなんだったのでしょう。

「もともとは、女性同士が会社を超えて成長し合えるネットワークを作ろう、ということから始まりました。自社の中で女性のワークグループで活動していたのですが、同じ企業や文化の中で成長し合うにも限界があります。そこで、企業を超えた交流をここ青山で広げることができないかと考えました。企業同士が成長するというよりも、そこに参加する一人ひとりが熱意を持てるということを大切にしています。」

企業の取り組みとして女性活躍やダイバーシティへのアプローチが行われている例は耳にしますが、個人に焦点を当てたものは珍しいのではないでしょうか。

「異なる者同士が出会うことで成長していくというビジョンは、わたしの実体験が元になっています。小さい頃は、図書館で一人、読書に没頭するような、偏屈な文学少女でした。そんなわたしの転機となったのが、大学時代に経験した留学です。あのとき初めて、圧倒的なマイノリティを感じたんです。」

それまでは、自分の居心地のよい場所に留まっていたという川向さん。自分から発信しなければ誰にも何も伝わらない、文化も背景も異なるコミュニティを初めて経験したことで、少しずつ意識が変わっていったと言います。そしてその変化は、社会人として働くなかでも、徐々に大きくなっていったそうです。




「同じように働いていても、自分の本心を伝えるのと伝えないのとでは、人と築ける関係性もまったく違いました。本音を伝えることで、一緒に働く同僚との間にも、友人のような深いつながりを築くことができるんです。」

こうした実感の積み重ねから、価値観でつながることに大きな意味を見出すようになり、それは川向さんの転機となりました。

「20代はたくさん旅をして、30代ではコミュニケーションやコーチングなどの勉強に時間を費やしました。インプットしながら、セルフコーチングを学んでいったんでしょうね。「これが自分らしさだ」と思っていた価値観の表皮がぽろぽろと剥がれ、それまで自分が大切だと思っていたものが、世間の常識や誰かの期待に応えるためのものだと気づいたんです。」

「世間のいう成功だとか、誰かが自分に寄せる期待ではなく、自分の価値観で生きようと思ったんです。そして自分が大切にしたい価値観に気づいたことで、誰かの価値観も大切にしなければいけないと思うようになりました。」

自分の本心を人に伝え、新しいヒト・コト・場所との出会いを楽しみはじめたちょうどその頃、川向さんはそれまで自分を縛っていた他人の価値観の存在に気づきました。そして、価値観はどんなものでも等しく尊重するべきものだと思い至ったのです。世間の価値ではなく、自分の価値を自覚することで、初めて他者を受け入れ、理解する基準をもつことができたと語ります。

「なんでもそうですが、体験してみないとわからないことがほとんどですよね。だから、好きとか嫌いを判断する前に、まず行動することを大切にしています。それは人との出会いにも言えることで、まず話を聞いてみる。例え自分の価値観とは違っていても、人の熱意に触れることで自分の中にある基準は強くなるし、その出会いが予想もしない何かに導いてくれるかもしれません。」

食わず嫌いをしていては、多くの出会いを逃してしまいます。だからといって、100の新しいものに出合おう!と意気込まなくても、出会いは向こうからやってくるもの。肝心なのは、自分に出会う準備ができているかなのです。
無理をせず、その瞬間の出会いを楽しむスタイルは、散走とも近いかもしれません。




「自分で漕がないと進まない自転車って、つくづく不思議な乗り物だと思います。ですが、自分で動かし、進みたい方向を決めるからこそ出会いがあるんですよね。それは、それぞれの熱意をもとに成長していくA-CROSSの活動そのものとも共通点があるかもしれません。」
「A-CROSSには幅広い年齢層の方に参加していただいていて、キャリアも興味も一人ひとりがまったく違います。でも「成長したい」という共通の目的がある。それぞれの成長の過程に、思わぬ出会いや化学反応を生んでいるのが、A-CROSSなんです。」

「理想は、私という旗ふり役がいなくても、そこに参加する一人ひとりの熱量で成長していける、“自走する組織”です。きっといつか、できると信じています。」

3年後、5年後と目標を定め、それに向かって努力することは、意義のあることです。ゴールを決めてそこに向かって走ることで、大きな達成感もあります。ですが、ゴール目がけて一直線に進むその時、周りの景色は見えないものです。
ふと風景や時間の流れに目を向ければ、そこから想像もしない毎日が始まるかもしれません。道のりを楽しんできたからこそ、今がある。川向さんはこれから先も、変化を続けていくのだと思います。自分の想いに素直になることで幾重にも広がって行く人生の姿を、川向さんから教えてもらいました。

近影

かわむかい・みどり
国際基督教大学卒業。日本オラクル株式会社にてコーポレート・シティズンシップを担当。企業でCSR活動に取り組みながら、2014年より青山で働く人のネットワーク「A-CROSS」を立ち上げ、参加者とともに成長しながら、コミュニティとして地域を盛り上げる活動を続けている。

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