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にぎわいと文化を生み出す 空間デザイナー 間宮 吉彦さん


地域活性化など、全国各地でさまざまな取り組みが実施されている中、いま、大阪・堺市が元気を取り戻しつつあります。その仕掛け人の一人が今回ご紹介する、空間デザイナー間宮吉彦さん。そして、実際に堺市の魅力を発信しようと間宮さんが手掛けたのが、「空間」と「時間」と「行間」をテーマにした、カフェと宿泊施設「SAKAINOMA(サカイノマ)」です。
※SAKAINOMAの詳細はコチラ http://sakainoma.jp

大阪を拠点に全国の飲食店や商業施設、オフィスなどの空間をトータルにデザインしてきた間宮さんがなぜいま堺市のまちづくりを手掛けているのでしょうか。

「一つは、私にとって堺は生まれ育った故郷であるということ。もう一つは、堺には新旧の文化が融合している魅力的なまちであるはずなのに、それを上手く発信できていなかったこと。」と語る間宮さんに一つのキーワードを挙げていいただきました。それは“時代”です。

「SAKAINOMAもたぶん、10年前、5年前では誰も興味を示さなかったかもしれません。もちろん、5年後ではもう遅いです。観光とはその土地の光を観ること。人が何かに魅力を感じるときは、目新しさや刺激が必要になるのですが、タイミングというのもすごく重要になると考えています。」

「多くの歴史的・文化的資産が残る堺市ですが、単に歴史的価値のあるモノを観たいのであれば近くに京都があります。しかし現代は、いわゆる建造物などのモノではなく、そこでどのような体験ができるかということを求める人も増えています。さらに、インターネットが普及し、情報を集め、その中で遊ぶのが当たり前になっている若い人が、実際に堺に訪れて、その土地に昔からある文化に触れることで驚きや新たな発見ができるのです。たとえば、出かけること、旅行などがブームだった時代では、体験すること自体に価値を見出だせなかったかもしれません。」

人々が求める少し先にあるものを、現代の視点で捉え直して発信していく。それこそが間宮さんならではの創造力であり、堺というまちを元気にする絶妙のタイミングでもあったのです。




観光を目的に地域を盛り上げようと考えたとき、すぐに思い付くのが自然や田舎であることをアピールする方法とイベントや商業施設などの新たなシンボルを創るという方法です。しかし間宮さんはこれらの方法を使わずに堺に“新しさ”を生み出しました。

「私が若い頃はちょうどカウンターカルチャーの時代でもあったので、とにかく人と同じことをするのが嫌い(笑)。あと、飽き性でもあるので常に新しいことを生み出していかないと楽しくない!という性格でした。」

「何も無から有を生み出すことだけがすべてではないのです。住まいや建築のリノベーションのように、視点を変えてあげる、カタチを変えてあげることで、誰かにとっての“新しい”を生み出すことができるのです。」

SAKAINOMAはまさに若い人たちにとっての“新しい”が詰まっている場所であり、空間でもあります。それは…
1.実際に堺というまちで過ごす「時間」が新しい。2.町家のような「空間」によって成り立つ時間が新しい。3.WEBやSNSではなく、訪れないとわからない「行間(奥行)」が新しい。こうした3つの「間」を融合させることによって“新しい”を生み出しながら、一方で、年配の方にとっては“懐かしい”という魅力も演出しています。

「文化はすぐに作り出せるものではありません。かといって、古いままだと時代に取り残されてしまいます。だからこそ、時代や文化をリノベーションするという発想やアイデアが必要になるのです。そして、いま見えていないものを形あるものとして提供し続けるのが私の仕事でもあると思っています。」

そんな間宮さんにSAKAINOMAや堺というまちがめざす未来像について伺ってみました。
「自分一人で何かを成し遂げたいということはないですね。SAKAINOMAをきっかけに同じような拠点が増えて、堺というまちを印象づけることができれば良いと思っています。でも私自身は、その頃には違う新しいことに挑戦していると思います、飽き性ですから(笑)。」
こんな風に言われると、ますます堺というまちに興味を持ち始めてしまうのも、間宮流のアピールなのかもしれません。




時代や文化をリノベーションするという発想やアイデアは、間宮さんが高校時代から続けているバンド活動も大きく影響しています。

「空間デザインという側面から建築物と向き合ってきました。建築物とは一定の期間を経ることで総合的な文化を積み上げていくもの。一方で、音楽やファッション、アートなどは瞬間、瞬間のパワーで文化を生み出していくものです。」
一見すると相反する2つの要素をご自身の価値観として持ち合わせているからこそ、時代が求めるモノやコトを創り出していけるのかもしれません。

さらに、こんなお話もしてくださいました。
「宿泊施設となっているSAKAINOMA錦の居間にはちゃぶ台があり、布団で寝てもらいます。これは若い人たちにとって、非日常的な空間でありながら、家で過ごす、寝るといった日常を体験してもらいます。さらにいうと、昔はちゃぶ台も布団も当たり前ではありましたが、居間にお客様を招き入れるというのはハレの日の出来事です。こうした非日常と日常の融合させることは、一過性のイベントでは感じることはできません。生活に根ざした場所、空間、時間で文化を感じることができるからこそ、意味があるのです。」

OVEも自転車を起点にして、食や本、街などを繋ぎながら、自転車文化を創ることをめざして活動しています。一方で、新しいことが生まれにくいといわれているこんな時代からこそ、視点やカタチを変え、非日常と日常を融合させることでこれまでにない“新しい”を創造していくのかもしれません。その積み重ねこそが、未来の文化となって私たちの暮らしの中に根ざしていくことを間宮さんから教えていただいた気がします。


近影

まみや・よしひこ
1958年 大阪生まれ。1989年(株)インフィクス設立。全国で飲食、物販などの商業施設の空間デザインをはじめ、あらゆるジャンルのインテリアから建築まで空間をトータルに手がける。特定の様式や主義にとらわれることなく、時代の欲するムードを表現し、その中に潜む普遍性を追求。現在、大阪芸術大学デザイン学科教授などを務め、後進の育成に尽力しながらも、時代の先を行く「間」の提案を続けている。

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