OVE

自転車に想いを乗せる エフ・デザイン代表 (自転車活用推進研究会理事)  藤本 典昭さん


ひと言で「自転車好き」といっても、その度合いや考え方、自転車への関わり方もさまざまです。
例えば、交通手段として自転車に乗っている人は「安全・安心」に興味があるでしょうし、メカニックに興味のある人はパーツ一つひとつに思い入れがあったり。

「自転車好き、自転車にこだわる人は意外と多いんです。その人たちが集まれる場所はもちろん、“自転車でつながる人たちをさらにつなげていく”ことを私は大切にしたいと考えています。」

せっかく「自転車」という共通項があるのに、みんながバラバラではもったいない。だからこそ、その人たちを結びつけていくことが藤本さんの目標でもあり、夢でもあります。

「いま、自転車活用推進研究会の理事を務めさせてもらってます。定期的に研究会を実施しているのですが、各会のテーマが面白く、人気のあるテーマとしては自転車の走る道路環境についてやメーカーの開発秘話などがあります。さらに、世界を旅してきた人を招いたり、しまなみ海道などの自転車を生かしたまちづくりの話もあります。いろいろな人に興味を持ってもらいたいですからね。」

研究会において主催者側でもある藤本さん。でも、決して自分の考えを押しつけるようなことはしないそうです。

「研究会で大事なのは、自転車でつながる仲間が集い、学び、そして、さらにつながりを深めていくこと。主催者側の私たちも毎回新しい発見に出会えますし、懇親会などでは自転車にまつわる話題が飛び交い、別れを惜しみながら解散していくんです。」

研究会というと少し堅苦しいイメージがありますが、藤本さんを始め、その内容もすごく親しみやすいのが印象的です。やはり、自転車同様、私たちにとっても身近な存在のようです。

「自転車“が”…というよりも、自転車“と”…という方がイメージしやすいと思います。もちろん、自転車が好きだから自転車が中心なんですけどね。でも、自転車って不思議な魅力があって、知らない人たちを結びつけてくれるし、いろいろな出会いの機会も与えくれるんです。」

一緒に楽しみながら、「伝える」のではなく、「伝わる」ことを重視して、日々活動している藤本さん。もちろん、ご本人も大の自転車好き!その原動力となっているのはどこにあるのでしょうか。単に自転車が好きというだけではない、藤本さんの原点に迫りました。




藤本さんと自転車の出会いは、多くの方と同じように少年時代。小学生になり、遊びの行動範囲も広がる中で、周りの友だちの中にも、1人、2人と自転車を買ってもらった人が増えてきたそうです。
「僕も欲しい!と親にせがみましてね。日頃からワガママをいわない私がこのときばかりはねばったので、それなら!となんとか買ってもらうことができたんです。」

「当時は気軽に自転車を買える金額でもなかったので、父親を説得するために、先生のお墨付きをもらったりと、母親がいろいろしてくれたんです。」

「とにかくうれしかったですね。ただ、いま考えると、自転車というモノが欲しいというより、自転車で友だちと遊びたかったんですね、やっぱり。」と語る藤本さん。自転車を通じた楽しさやうれしさを大切にする想いは、いまの活動にも通じるものがあります。

すっかり、自転車の虜になった藤本さんは、中学卒業後、工業高等専門学校へと進学するにしたがい、自転車での遊び方も乗り方も本格的になっていきます。

「キャンプに行ったり、高専時代は同好会を作ったり、さらには自転車のパーツにも興味をもったりと、本当に自転車にはまっていました。自分好みの自転車を作り上げていくのがとにかく楽しかったんです。でも、就職した頃から、仕事が楽しく、忙しかったこともあり、自転車からは少し離れてしまう時期がありました。」

高専を卒業してから、家電関連の商品開発に熱中する日々。そこでも、生活者の利用シーンを想像しながら開発していくプロセスが楽しかったそうです。

「自転車と似ていて、モノづくりも開発自体も楽しいのですが、そのプロセスやこだわりに意味があり、出来上がった時の満足感が何よりも夢中にさせてくれました。そして時が経ち、自分のライフワークが何であるかを考えた時、きっかけになったのはパートナー(奥様)との会話の中で、パートナーは『自分は今の仕事を天職としている』との言葉でした。そこで気づくんですよね。自転車を中心に、その可能性を探求していきたいと。」

パートナーの言葉から、自転車への想いを再燃させる藤本さん。現在、どのような活動をしているのか気になるところです。




現在は、自転車活用推進研究会の活動の一つとして、「自転車交通安全教育プログラム」の開発や講師も務めており、自治体と連携して学校などで子どもたちに交通安全教育を行っています。

「単に交通ルールを教えるというわけではありません。気をつけているのは、「ルール」だから「義務」だからと押し付けるのではなく、例えば実技では遊びの中で教えていくということ。子どもたちにワクワクハラハラさせながら、できる!よろこびも味わってほしいと思ってます。」

ここでも藤本さんの探求心と伝わることへのこだわりを発揮されています。

「子どもたちに「伝わる」ためには、念入りな準備が必要です。座学ではパワーポイントの資料にもこだわりますし、子どもたちが自分のこととして感じてもらえるように、学校の周りや道路状況を事前に詳しくチェックして、事例を作り上げます。ここまでしても、まだまだ「伝わる」ことって難しいなと思いますね。」

また、学校で子どもたちに教えるには1人ではできません。そこで、“教える機会”がなかった人なども巻き込んで、仲間と一緒に活動しているそうです。

「私はもちろん、いま活動しているグループメンバーがそれぞれ、一緒にやろうよ!と周りの自転車仲間に声をかけています。もちろん強制はしませんが、これまで自転車の楽しさを通じてつながってきた仲間ですので、少し目線を変えて、今度は伝わることの楽しさも共有したいんです。だって、自転車が悪者になってほしくないですし、社会にとってなくてはならないツールであり続けてほしいと私自身が願っているからです。」

「これからも自分に何ができるかはわかりませんが、自転車にはこだわっていきたいですね。」そう語る藤本さんから、これまで当たり前すぎて気づくことのなかった自転車の可能性が広がっていくのを感じます。そして、さまざまな壁や枠を乗り越えてでも、誰かに伝え、共有することの大切さを教えてくださっているように思います。

OVEとも関わりの深い、自転車のある暮らし。私たちはこれからの子どもたちや未来に何を残していけるのでしょう。それはきっと、自転車というモノではなく、その周りにあるココロにヒントがあるのかもしれません。


近影

ふじもと・のりあき
大阪府出身。エフ・デザイン代表。機械工学を専攻した後、30年間メーカーで家電製品の研究開発に従事。現在、自治体の自転車関連委員を務める一方、市民、学生、子ども向けに年齢層に応じた「自転車交通安全教育プログラム」の開発と講師を務める。また、「まちづくり」「健康」「子供の自立」といった分野への「自転車」の活用を追求している。NPO自転車活用推進研究会 理事。

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