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“ワクワク”をシェアする季刊紙「cycle」編集発行人


皆さんは『cycle』というフリーペーパーを読んだことはありますか。まだ!という方は、ぜひOVEにも置いてあるので手にしてみてください。第一印象は、きっと「これって自転車の情報紙?」と思うはずです。

杉谷さんが編集発行人を務める季刊紙『cycle』は、いわゆる一般的な自転車情報誌とは趣が異なります。カフェの紹介や手作りおやつのレシピ、さらにはバードウォッチング入門、など、読んでいて楽しくなるコンテンツが満載なのです。

「もちろん、自転車は大好きです。でも、私自身レースに出たり、ストイックに自転車と向き合うサイクリストではないかなと思っているんです。そんな私が感じる、自転車の楽しみ方を考えていたら、いまのような情報紙になっていました(笑)。」

自転車情報紙の編集発行人。どんなに自転車LOVEな方かと想像していたら、ご本人はいたって自然体。自転車を通じて、いろいろなことを楽しんでいる方だということに驚かされました。では、なぜ自分が楽しんでいることをフリーペーパーというカタチで発信しているのか。そこには、子供の頃の“ある新聞”に辿り着きます。

「杉谷家には小さい頃から『すぎのこ通信』という家族新聞があったんです。母親が編集長で家族みんなが記事を書く。そして、その新聞は家族はもちろん、親戚や友人にも配られます。」

実は、ご家族の関係で転勤族だったという杉谷家。全国各地に引っ越しを繰り返す中で、その時々にできた友人や遠く離れてしまった親戚に、自分たちの状況を伝える手段として『すぎのこ通信』は誕生したのです。

「小学校高学年の頃から始まって、創刊号から自分で記事を書いていたんですけど、楽しかったですね。自分の感じたことや思っていることを伝えて、それに返事がきたりすると嬉しくて。しかも、私が結婚するまで、13年間も『すぎのこ通信』は続いたんです。」

自分の想いを伝え、それを誰かと共有する。その喜びを小学生の頃から感じていた杉谷さん。それは単にインフォメーションとしての情報発信でなく、「想い」を発信する『cycle』にも通じるものがあります。




『cycle』を自転車の初心者と文化系自転車乗りのためのフリーペーパーだと語る杉谷さん。紙面には自転車のことはもちろん、読んでいるだけでお出かけしたくなるような情報がたくさん掲載されています。では、なぜ読んでいるだけで“ワクワク”するような気分になるのでしょうか。

「転勤族だった話は先ほどしましたが、幼稚園〜小学校の頃は転校ばかりだったんです。周りの子たちと友だちになれたなぁと思った頃には、また次の引っ越しが待ち受けているんです。だから、転校先で早く友だちできるように、自然と自分から楽しいこと、面白いことを見つけて、みんなに話していくようになったんです。『あれが面白いよ!』とか『これ知ってる?』といった具合に。」
そうして自分が感じたことを周りの人たちと共有することで友だちになっていった杉谷さん。それはいまも変わることがないそうです。

「基本的には、自分で行って、見てきて“楽しい”と感じたことを記事に載せています。もちろん、お店の情報などはネットで調べれば紹介記事を書くことも、それをサイクリングにどうぞ!というカタチで紹介することもできます。でも、それじゃあ意味がないですよね。私自身がリアルに感じたことを発信していくから、相手にも伝わると思うんです。それは、フリーペーパーであっても変わらないですね。」

そんな杉谷さんですが、編集発行人として一つ気をつけていることがあるのだとか。

「少し矛盾するかもしれませんが、私たちの感じたことは発信しますがお勧めし過ぎないということです。よく『どうやって楽しめば良いですか』『どこに行けば楽しいですか』などの質問を受けることもありますが、楽しみ方って人それぞれだと思うんです。サイクリングのおやつレシピを見て、サイクリングに行かずに自宅でお子さんと一緒におやつ作りをしても良いんです。そして、そのおやつ作りを通じてちょっと自転車でお出かけしてみようか、というのも全然OK!自由に楽しんでください!というのがいまの『cycle』のスタンスです。」

どこか気取らず、私たちの生活の中での自転車の楽しみ方を教えてくれる杉谷さんに、共感を覚えるのは、押しつけない姿勢と自らが楽しんでいる姿勢にあるのかもしれません。




杉谷さんとOVEには、たくさんの共通点があります。それは、自転車を楽しむために、自転車以外のことにも目を向けるという考え方。そして、そんな想いに共感してくれた人たちが集う場であるということ。杉谷さんはフリーペーパーを通じて、OVEではカフェや雑貨、本を通じて行っています。こうした場を通じて、人と人がつながっていく。

そこにはいろいろな考え方との出会いがあって、新しい発見があります。でも、それを楽しいと感じるには、自分自身のアンテナを目一杯広げて、好奇心を外へ外へと向けていく。そして、自分の想いを誰かに伝え、共有し、それがどんどん広がっていったときに、大きな“楽しい”に出会えるのかもしれません。

杉谷さんが編集を手掛ける『cycle』は、これからもたくさんの“ワクワク”を届けてくれます。その一つひとつに好奇心のアンテナを広げてキャッチしていくことで、私たちの毎日はもっともっと充実したものになってくることでしょう。


近影

すぎたに・さやか
1981年大阪生まれ。編集者。株式会社ピクニック社代表。2004 年京都造形芸術大学芸術学部情報デザイン学科卒業。在学中に書籍『キョウト自転車生活』の編集に関わったことをきっかけに、卒業後、株式会社ワークルームに勤務。同社にて『京都自転車デイズ』『大阪自転車ホリデー』などの書籍や企業媒体の編集に携わり、2015年に独立。2008 年より『cycle』編集長。2014年より京都造形芸術大学芸術学部情報デザイン学科にて非常勤講師。著書に『神戸自転車ホリデー』がある。

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