OVE

「好き!」で暮らしを彩るガーデンデザイナー


誰もが好きなことを仕事にしたいと一度は思ったことがあるのではないでしょうか。烏賀陽さんはまさに、庭好きを仕事にしてしまった一人。OVEでは、「寄せ植え教室」の講師としても人気があり、『一度は行ってみたい 京都絶景庭園』を執筆する烏賀陽さんに、ガーデン愛の原点について聞きました。

「小学生の頃は野山を駆け回っているような子どもで、母もガーデニングをしているなど、自然や草花に触れているのが好きだったんですよ。でも、大人になるにつれて、忘れてしまっていたんです。」

好きなことを仕事にする人は特別な人で、一途にその道を歩んできたのかと勝手に想像していたので、意外な答えが返ってきました。

烏賀陽さんは大学卒業後、普通にOLとして就職。ガーデン愛を封印してしまったかのように、自然や草花とは縁のない日々を過ごしていたそうです。でも、何かが違う…そんな想いが徐々に高まっていきます。その中で思い出したのが、幼い頃に自然が好きだった烏賀陽さんご自身の姿でした。

その気持ちに気づいた烏賀陽さんは、世界を飛び回る現在の活動にも通じるフットワークの軽さで、淡路島にある淡路景観園芸学校に入学。その後は、カナダ・ナイアガラ園芸学校で3年間園芸やガーデンデザインを学び、イギリスの庭園でインターシップを経験するなど、前へ突き進みます。それでも、これまでとは違う未知の道。不安はなかったのでしょうか。

「日本の園芸学校に入りましたが、まだそのころは不安でしたね。自分のやりたいことを学んでいる充実感はもちろんありましたが、この先どうなるのだろうと。きっかけは、ナイアガラ園芸学校での経験。本当にイチから庭園の維持管理などの仕事をしたときに『あぁ、私の好きなことは仕事になるんだ』って。」

日本に帰国後は、地元でもある京都を拠点に、ライフワークでもある庭のデザインやカウンセリングを行ったり、ガーデニングの指導をしたりして、いまに至ります。




烏賀陽さんの「寄せ植え教室」に参加すると、皆さんの笑い声と共に、これまで少し距離のあったガーデニングや庭園が身近に感じられるから不思議です。庭にまつわる海外の文化や歴史を比較しながら、わかりやすく教えていただけるので、これまでとは違った見方ができるようになるのも魅力のひとつです。では、烏賀陽さんご自身は庭園や草花などの植物をどのように捉えているのでしょうか。気になったのでプロの視点をうかがってみました。

「かわいい〜」「かっこいい!」「これ好き!」
実はこれ、好きな庭と出会ったときの第一声なんだそうです。少し意外に思った方も多いのではないでしょうか。あれ?私たちと同じかも…なんて。でも、この気持ちがとても大切だと烏賀陽さんは言います。その真意とは…。

「寄せ植えもそうですが、もちろん知識や技術は知らないよりは知っておいたほうがいいかもしれません。でも、そればかりでは楽しくないですよね。なんだか堅苦しいものになってしまいます。植物って自然にあるものだし、もっと気軽に楽しんでいいと思うんです。庭を見て、花を見て、何を思うかは人それぞれですが、そのときの気持ちを大事にしてほしいです。」
「気になったもの、いいなぁと思えば、きっともっと知りたくなると思うんです。自分自身が感じる気持ちに、正解も、間違いもありません。私の寄せ植え教室では、参加される皆さんに“感じる”ことの大切さを伝えていけたら良いなと思っています。」

寄せ植え教室に参加されている方の中には、どの花を、どこに植えたらいいのか迷ったり、枯らしてしまったらどうしようと不安に感じてしまったりする方も多いそうです。そんな時は、「もし枯れてもクヨクヨしないでくださいね。枯れた時は次の植物を植えればいいんですよ。」と伝えているそうです。

情報社会のいまは、わからないことはぜんぶスマホで調べられる便利な世の中です。知識もたくさんあって、植物を枯らさないための情報もいろいろ得ることができます。植物の歴史だって、調べようとすればわかります。
でも、“私はこの花が好き”という気持ちはスマホでは調べられません。そんな“感じる経験”を教えてくれるのが烏賀陽さんです。さらに、自称:庭オタ・石萌えでもある彼女は「好き!」が高じて日本庭園の本について執筆したり、OVEで京都の庭園の魅力を知る散走を行ったりと、共感の輪が広がっているです。




烏賀陽さんはいつも楽しそうに、庭のこと、植物のことを語ってくれます。そしてなにより、ご自身がパッと明るく咲く花のように輝いています。それはきっと、自分の好き!という気持ちにすごく正直だからかもしれません。

膨大な知識で心を構築し、しがらみなどで自分自身の気持ちすらわからなくなってしまっているのが、いまの私たちではないでしょうか。確かに、便利なこと、知識があることは日々の生活をしていくうえで役立つことも多くあります。その一方で、感動することや驚くことが少なくなっていることに気づかされます。

OVEの散走イベントも目的はありますがゴールを競うものではありません。そこにあるのは、好奇心の赴くままに新しい何かに出会うこと。それは、モノだけではなく、自分のキモチなのかもしれません。

進む道は真っ直ぐでなくてもいい、だって、好き!という気持ちを日々の生活の中で感じることができれば、いろいろなところに寄り道したくなるはずですから。なんだか、烏賀陽さんが植物と触れあう姿を見ると、そんな風に思えてきます。きっと、私たちの周りにある植物は、豊かな暮らしのヒントを“経験”させてくれているのかもしれません。


近影

うがや・ゆり
同志社大学文学部日本文化史卒業。兵庫県立淡路景観園芸学校・園芸本課程卒業。カナダ・ナイアガラ園芸学校で園芸やデザインを学び、ナイアガラ植物園の維持管理やイギリス・キューガーデン付属のウェークハースト庭園にてインターンシップを経験。現在、京都を拠点に庭のデザインやカウンセリング、マンションのベランダや小さな庭でもできるガーデニングを指導。気軽に植物を楽しめ、生活の中に取り込めるガーデニングを提案している。京都のお勧めのお庭やカフェについて書いた「一度は行ってみたい 京都絶景庭園」(光文社・知恵の森文庫)が絶賛発売中。

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