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流行を追わないアパレルクリエイティブディレクター


自転車×ファッションをコンセプトに機能的でオシャレなファッションアイテムを提案するnarifuri(ナリフリ)。サイクリストのみならず自転車に乗らない人にも愛用者は多いnarifuriブランドを立ち上げ、商品の企画を手がけるのが、代表の小林一将さんその人です。

ブランドをスタートさせたのは2007年のこと。当時はよくこんなことを聞かれたそうです。
「小林さんは自転車愛好家ですよね。どんな自転車に乗っているんですか?」「動きやすい、こぎやすいなどの実用性を求めて作られたんですよね。」と。

その度に小林さんは困ったといいます。もちろん、自転車を通勤に使っていたことはありましたが、それ以上でもそれ以下でもない程度。それに、あくまで仕事であり、仕事であるからには戦略が必要です。ファッションという世界で、どうしたら自分のブランドを確立できるのか、試行錯誤し、考え抜いて辿り着いた答えが「自転車×ファッション」だったのです。

「アパレルブランドを立ち上げるのに、まず考えたことは流行を追わないということ。そして、誰もやったことのないことをやること。」

既にあるモノを100へと高めていくのでは意味がなく、また競争を勝ち抜くことはできません。0から1を生み出すことを追い求めた結果が、いまのnarifuriなのです。

当時は、自転車に乗る人のファッション性が高まり、少しずつだが自転車アパレルが認知されてきた頃。「自転車=エコというイメージが根強く、サイクルウェアも明るい色合いのものが多かったんです。だからこそ、商品の第1号となるメッセンジャーバッグやマウンテンパーカーのカラーは、ちょっとアウトロー的なイメージを作りたくて黒(ブラック)にしたんです。」

この色選びひとつを取ってみても、「自転車アパレルでビジネスをする」という小林さんの狙いが見えてきます。では、「自転車アパレルでありながら、自転車らしくないブランド」という発想はどこからきたのでしょうか。その原点は海外でのある出会いにまで遡ります。




narifuriという名前の由来は「服装(ナリ)と態度(フリ)」で、洋服そのものではなく、それを着て過ごすスタイルを重視していることがわかります。

単に着飾るだけでなく、スタイルとして確立していく。それは、海外留学した際にインターンシップで訪れたある企業の上司の方の教えでもありました。

「正直、仕事のことはなにも教えてもらいませんでしたね(笑)。でも、とにかくカッコイイ大人だったんです。そのスタイルというか、生き様がね。」

「言葉では上手く説明できないのですが、自分も彼らのようになりたいと本気で憧れました。そこには確かに、誰にもマネのできないスタイルがあったんです。いま思い返すと、ブランドというのも同じですよね。目には見えないけれど、そこには必ず哲学や思想があるんです。」

世の中にないものを作るということは、想像つかないような半歩先のモノ作りが必要になります。それを繰り返すことこそが、ブランディングにつながり、小林さんのスタイルでもあるのです。だからこそ、自転車という軸をベースにしながらも、自転車という枠を超えていくことができるのかもしれません。

「よく、21.5世紀の服を作りたいなんて言うのですが、私たちがめざしているのは、もちろん空想の世界にある未来の洋服ではありません。つまり、ファッション性を重視して機能が劣ったり、機能性を重視するあまりファッション性が失われたりしない、両方を兼ね備えた、いまより一歩先を行く洋服のことなんです。」

narifuriのスーツは、通気性や速乾性といった機能が充実していて、軽い。しかし、自転車用のデザインにはなっていない、見た目がしっかりとスーツなのです。佇まいや着こなし、着心地にこだわる商品は、袖を通せばその良さを実感することができ、そのこだわりが30代や40代といった大人の方に支持されているのです。




「いまは商品の企画を手がけていますが、私はもともとデザイナーではありません。なので、よくファッションデザイナーがするようなスケッチなども書けません。ただ、“売る”とは、“ブランド”とはどういうことなのかは、とことん考えています。」

narifuriのあるべき姿をいまも模索中という小林さん。常に現在進行形のブランドと向き合い続けるからこそ、新しい価値を生み出していけるのかもしれません。エンドユーザーの視点とプロの視点が融合されて生まれる、小林さんの動向には、業界内外から大きな期待が寄せられています。

「例えば、お菓子・コトバ・クルマ…。きっとどんなモノを作ってもnarifuriらしさが出てこないとダメだと思うんです。そんな誰からも認めてもらえる“らしさ=スタイル”を今後も追い求めていきます。」

個性がない…といわれる現代において、小林さんのめざすべきスタイルは、人生を生きる意味においても大きなヒントをくれるような気がします。自分らしさ、それはありのままの自分という側面もありますが、他人とは違うことに挑戦し続けるということでもあるのではないでしょうか。

今年の6月にはNYの店舗が開店するなど、海外での展開も動きだしました。小林さんは今後もスタイル(ブランド)を通して、いくつもの驚きを私たちに提供してくれることでしょう。OVEでもこの春夏のコレクションを取り扱っていたり、イベントが開催されたりと、narifuriを実感できる機会をたくさん設けていますので、ぜひ小林さんのスタイルに接してみてください。

※この記事は2015年5月にインタビューしたものです。
2016年7月31日を以てnarifuri代表を退任。


近影

こばやし・かずまさ
narifuri代表。ニューヨークにてファッションマーケティングを学んだ後、イタリアブランドのPR,営業を担当。帰国後、アパレルメーカーにて営業、生産管理を経て独立。2007年、narifuri設立。

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