OVE

ブログでつづるTour de OVE

世界で一番かわいいと思った女のコの記憶

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ラルプデュエズのアプローチにあるブールドワザン © Laurent Salino


仕事をしながらフランスの各地を回るのは本当に楽しい。この日はアルプスのふもとからオーベルニュ・ローヌアルプ地方へ。南仏プロバンスももうすぐのところまで南下した。ワインの原料となるブドウはもとより、メロンなどの果実類も収穫される。

ゴールの町バランスを北から南に流れるローヌ川はそのまま下流をたどると地中海に行き着く。「太陽への道」という愛称を持つA7高速はフランス中南部のあるリヨンと地中海に面したマルセイユを結ぶオートルート(自動車専用道)。パリとリヨンをつなぐA6高速と合わせて物流の大動脈。日本で言ったらいわば東名高速だ。このあたりはガソリン単価も安いのでとてもありがたい。

7月14日のフランス革命記念日を合図にフランスはバカンスシーズンとなるが、A7高速は地中海に向かうクルマで大渋滞となる。その日が週末だったり、さらに近くにツール・ド・フランスが走ったりするときはもう数時間で1mmも動かないなんてことも。1日分の食料と水、エアコンが稼働できるガソリンがたっぷりとないときは、死の恐怖さえ覚えた経験もある。


アペリティフでビールを飲みながら、サラダとメイン、安価な水差し入りワインを注文するのが基本かな


こんがりと日焼けすることをフランス人は「ブロンゼ=ブロンズ色になる」といって喜んでいた。特にパリっ子たちは優雅な地中海でバカンスを過ごしたという証明になるので、かつては争うように日焼けをした。ところが最近の紫外線の強さに警戒感を持ったのか、ブロンゼは次第に敬遠されるようになった。ツール・ド・フランスに出場する選手たちも日焼け止めクリームをしっかりと塗る時代である。まあ、こちらのほうは疲労を低減させるという意味もあるのだが。

高速道路と平行して旧街道も南北に延びる。まだネット予約なんてなかった20年前、飛び込みで確保できたのは街道筋の安ホテル。周囲に食べるところはなにもなく、シャワーのお湯も満足に出ず、あまりの孤独感に泣きそうになった。こういうホテルは次々に廃業していき、今では高速インター近くに快適ホテルが林立する。フランスで1万人が死んだという2003年の猛暑をきっかけにエアコンも完備されてきた。


選手到着までまだ5時間以上ありますが、ゴールのバランスは大会ボランティアさんが配置についています


どこの町だったか覚えていないのだが、クルマでスラム街にまぎれ込んでしまった経験がある。汚れた服装をした子供たちがクルマのドア越しにボクの顔をうかがっているのがわかる。道に迷った東洋人が不安げに運転しているのはバレバレだ。
「どこに行くのさ?」
小学校高学年くらいの女のコがクルマのドアに片ヒジをついてきた。
「あ、はい。A7高速の入口かな、なんて…」
「そうなの。ムッシュー、着いて来なよ!」と近くにいた男のコの原付バイクをひったくってボクのクルマを先導してくれた。A7高速入口で進行方向を指さす彼女に、お礼としていくら渡すべきかなとマゴマゴしていたら、とびっきりのウインクを決めて風のように走り去ってしまった。世界で一番かわいいと思った。カーナビなんてなかった時代である。

変わらないのは悠々と流れるローヌ川。その豊富な水量を冷却水として使う原子力発電所。巨大な建造物から水蒸気がもくもくと吹き出している。20年前と変わらない光景だ。(山口和幸)

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